あなたは、住宅ローンと相続の関係をご存じでしょうか?
住宅ローンの加入時に、「だんしんに入っていれば、死亡時に残った住宅ローンはゼロになりますよ」などと説明を受けているはずですが、もう昔のことなのですっかり忘れてしまった…という方も多いのではないでしょうか。
ここでは、住宅ローンと相続の関係についてご説明していきます。相続手続きを進めるための役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
1.まずは相続される財産とはなにかを確認しましょう
まずは、どんな財産が相続の対象となるかを確認します。
民法896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
この法律にあるように、相続される財産とは「被相続人の財産に属した一切の権利義務」ということになります。
この「被相続人の財産に属した一切の権利義務」の中にはマイナスの財産である借金などの債務も含まれます。つまり、住宅ローンなどの債務も原則として相続される財産の対象になるということです。
2.団体信用生命保険(だんしん)とは
最近では金融機関でお金を借りて住宅ローンを組む際に、多くの人が団体信用生命保険(「だんしん」と呼ばれることが多い)に加入するようになりました。また、大半の金融機関では加入が義務付けられてもいます。
この団体信用生命保険とは、住宅ローンの借主がローンの返済途中で死亡した場合に、残った借入金を保険会社が代わりに支払ってくれる生命保険のことです。
つまり、団体信用生命保険に加入さえしていれば残った借入金がゼロになり、住宅ローンの相続問題というものは無くなるのです。
住宅ローンを組んだ人の中には「なんだかよくわからないまま団体信用生命保険というものに加入させられたんだけど…」と言う人もいたりしますが、残された家族の生活のためには加入しておいたほうがよい大切な保険ということですね。
したがって、住宅ローンを組んでいる人が亡くなったらこの団体信用生命保険への加入の有無を必ず確認するようにしましょう。保険の適用を受けることができれば、残りの住宅ローンは保険会社が支払ってくれることになります。
なお、団体信用生命保険の加入率は住宅ロ-ン利用者の95%以上とする調査結果もあります。
もし、団体信用生命保険の適用に気づかずにローンの支払いを続けてしまっていたら、返還の手続きをすることで本来支払う必要がなかった住宅ローンが返還されます。思い当たる人はすぐ金融機関に確認してみましょう。
3.団体信用生命保険に加入していない場合は
前述したように、相続人は被相続人(亡くなった人)のプラスの財産とマイナスの財産の全てを引き継ぎます。したがって、被相続人が団体信用生命保険に加入していなかった場合は住宅ローン債務も引き継ぐことになります。
3−1.住宅ローンは誰が支払っていくのか
引き継いだ住宅ローンは、原則として残された相続人が共同して支払っていかなければならないとされています。そして、各人の支払っていく割合は法定相続分に応じた金額です。
もっともこれは、法律的な「原則として」の話です。現実にある多くのケースでは、遺産分割協議によってその住宅を相続した相続人が支払っていくケースが大半です。
そして、特定の相続人が住宅ローンの支払いを引き継ぐためには、金融機関に届け出をして「債務引受の承認」をしてもらう必要があります。金融機関側からすると、支払い能力のない相続人に住宅ローンを引き継がれてしまうと困るので、こういった取り扱いになっているのです。
金融機関に債務引受の承認をしてもらったら「抵当権の債務者変更の登記」をすることになります。「住宅ローンを引き継いで支払っていくのは◯◯です」ということを登記として公示しておくわけですね。
この登記は少し難しい登記となりますので、司法書士に依頼するのが一般的です。依頼できる司法書士がいない場合には、金融機関が司法書士を紹介してくれると思いますので困ることもないでしょう。
4.住宅ローンと相続まとめ
住宅ローンと相続について、次の4点にまとめておきます。
- 住宅ローンなどの債務も原則として相続される財産の対象になる
- 団体信用生命保険とは、住宅ローンの借主がローンの返済途中で死亡した場合に、残った借入金を保険会社が代わりに支払ってくれる生命保険のこと
- 団体信用生命保険に加入さえしていれば残った借入金がゼロになり、住宅ローンの相続問題というものは無くなる
- 被相続人が団体信用生命保険に加入していなかった場合は、住宅ローン債務も引き継ぐことになる
以上見てきたように、住宅ローンの相続は団体信用生命保険の適用を受ける可能性が高いといえます。
どちらか分からない人も、一度は住宅ローンを組んだ金融機関に確認しておくとよいでしょう。
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