アパートローンなどの金銭債務は、相続される財産の対象です。
アパートを相続した人が当然にローンも引き継いで支払っていくもの…と思いたいところですが、そう単純ではありません。アパートローンの支払者をきちんと変更するには、債権者である金融機関の承諾を得る必要があるからです。
ここでは、アパートローンと相続の関係についてご説明していきます。
目次
1.アパートローンは、金銭債務として相続される財産の対象
冒頭にも書きましたが、アパートローンなどの金銭債務は相続される財産の対象です。
「債務」とは「◯◯をする義務」という法律用語です。ここでは、「アパートローンを引き継いで支払っていく義務は相続される」という意味になります。
民法896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
2.金銭債務の相続は遺産分割協議だけでは足りない
遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の遺産を相続人の全員でどのように分けるのか協議をすることです。この協議によって、アパート(物件)とアパートローン(債務)を相続する人を決めていきます。
アパート(物件)の相続は、この遺産分割協議で相続する人を決めて、物件の名義変更登記をすれば手続きは完了します。この点について特に問題はありません。
一方で、アパートローンを特定の相続人にきちんと引き継ぐためには、遺産分割協議の取り決めに加えて、債権者である金融機関の承諾を得る必要があります。
この承諾を得ないままでいると、全相続人が金融機関に対して、法定相続分に応じた支払い義務を負っている状態が続くことになってしまいます。
参考:東京高裁昭和37年4月13日決定
遺産分割の対象となるものは被相続人の有していた積極財産だけであり、被相続人の負担していた消極財産たる金銭債務は相続開始と同時に共同相続人にその相続分に応じて当然分割承継されるものであり、遺産分割によつて分配せられるものではない
3.金銭債務をきちんと相続するには、債権者(金融機関)の承諾が必要
金融機関側は、ローンを引き継ぐ相続人の返済能力をきちんと審査します。もし、支払い能力に難ありと金融機関が判断すれば、新たな保証人等を要求されることもあるでしょう。
金融機関の承諾が得られたら、アパートローンの「債務引受契約書」を作成します。この契約書は、各金融機関に備え付けのものがありますので、その指示にしたがって作成すれば問題ありません。
金融機関と債務引受契約を締結した後は、アパートローンの「債務者変更登記」を司法書士に依頼して手続きは完了です。依頼できる司法書士がいない場合は、金融機関が司法書士を紹介してくれると思いますので困ることもないでしょう。
4.アパートローンと相続まとめ
以上見てきたアパートローンの相続は、次の手順で進んでいきます。
- 遺産分割協議でアパートローンを相続する人を決める
- 金融機関とアパートローンの債務引受契約を締結する
- 司法書士に依頼して、アパートローンの債務者変更登記を完了させる
ここでは、アパートローンと相続について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
これらの手続きを完了させておかないと、全相続人が金融機関に対して、法定相続分に応じた支払い義務を負っている状態が続くことになってしまいます。
アパートローンを相続しない人も、これらの手続きが完了しているか確認しておくようにしましょう。