全国どこにでも店舗があり、利便性が非常に高いゆうちょ銀行。多くの方が口座をお持ちのことでしょう。
利用するには便利なゆうちょ銀行ですが、相続手続きは他の銀行と異なり、少しだけ時間と手間がかかります。
ここでは、ゆうちょ銀行の相続手続きについてご説明していきます。
貯金の総額が100万円以下の場合は、簡易解約の手続きが可能ですので、該当する方は目次の5からお読みください。
目次
1.ゆうちょ銀行相続手続きのおおまかな流れ
ゆうちょ銀行の相続手続きは、次の流れで進んでいきます。
- 最寄りのゆうちょ銀行へ、相続手続きの申し出をして、相続確認表を受け取る
- 相続確認表を記入後、ゆうちょ銀行へ提出
- ②の1〜2週間後、「相続手続請求書」と「必要書類のご案内」が送られてくるので、記入してゆうちょ銀行へ提出
- ③の1〜2週間後、代表相続人の口座へ貯金の払い戻しがなされる
ゆうちょ銀行の相続手続きにおいて、他の銀行と大きく異るところは、相続確認表を提出する点にあります。必要書類が揃っていてもすぐに手続きに入ることはできず、まずは一旦相続確認表を提出しなければ、手続きを進めることができません。
また、受付け自体は、全国どこの窓口でも受け付けてくれますが、すべての相続手続きの処理は「貯金事務センター」というところで一括して行っているので、書類のやり取りにも時間がかかります。
このため、最初の来店からすべての手続きが完了するまで、1ヶ月近くの期間がかかる可能性があることに留意しておきましょう。
次項以下で、必要書類と手続きの流れを詳しくみていきます。
2.相続手続きの申し出と相続確認表の受け取り
相続手続きの申し出は、全国どこのゆうちょ銀行でも可能です。申し出をすると、相続確認表を渡されますので、記入して提出しましょう。
相続確認表に記入する事項は次のとおりです。申し出の際に通帳を持っていけば、その場ですべて記入することができます。
- 被相続人(亡くなった人)
- 代表相続人
- その他の相続人
- 相続人間の紛議の有無
- 遺産分割協議書の有無
- 遺言書の有無
- 貯金の記号番号
- 投資信託の有無
★窓口へ行く前にゆうちょ銀行へ連絡して、必要な持ち物を確認しておきましょう
3.必要書類のご案内と相続手続き請求書

相続確認表の提出から1〜2週間後に、ゆうちょ銀行から「相続手続請求書」と「必要書類のご案内」が送られてきます。
3−1.必要書類のご案内
ゆうちょ銀行の相続手続きに必要な、書類一覧が記載されたものです。
収集・作成する書類は、主に次のようなものです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人の現在の戸籍謄本
- (①、②は法定相続証明書で代用可)
- 遺言(ある場合)
- 遺産分割協議書(遺言がない場合)
- 印鑑証明書(6ヶ月以内のもの)
- 相続手続き請求書(相続人全員の署名・実印の捺印が必要)
★詳細は、ゆうちょ銀行から送られてくる「必要書類のご案内」をご参照ください。
戸籍類の集め方は、こちら↓の記事をご参照ください。
遺産分割協議書の作成方法は、こちら↓の記事をご参照ください。
法定相続証明書については、こちら↓の記事をご覧ください。
3−2.相続手続き請求書
相続手続き請求書には、次のような事項を記入します。
- 被相続人の氏名・住所・生年月日・死亡年月日
- 相続人全員の署名・実印の捺印
- 貯金の種類・記号・番号
- 遺言の有無
- 払い戻し口座
★手続きされる方の状況によって若干異なりますので、詳細はゆうちょ銀行にご確認ください。
遺産分割協議書を作成する際には、
遺産の分け方をきちんと記載すること相続人全員の署名・実印の捺印
の2点が必要です。
これには、預貯金の分け方も記載することができます。
つまり、遺産分割協議書を作成し、これにゆうちょ銀行の貯金の分け方も記載することによって、
ゆうちょ銀行の貯金の分け方を示し相続人全員の署名・実印の捺印によって、相続人全員の意思確認ができている
ことになり、法的にも有効な書面として成立します。
これに加えて、ゆうちょ銀行の相続手続き請求書に、相続人全員の署名・実印の捺印を必要とする取り扱いには、少し疑問が残ります。
たとえば、遺産分割協議がなかなかまとまらず、やっとの思いで相続人全員の署名・捺印を集めた後に、またゆうちょ銀行の相続手続き請求書に、相続人全員の署名・捺印をしなけらばならないケース。貯金を相続できない相続人がスムーズに協力してくれず、遺産分割協議の内容を再度蒸し返してしまうことが考えられます。
ほかに、相続人の一人が遠方に住んでいて、遺産分割協議書の署名・捺印のやり取りを郵送で行ったケース。ゆうちょ銀行の相続手続き請求書も、再度郵送でのやり取りが必要になってしまうでしょう。
ほかの多くの銀行では、遺産分割協議書に相続人全員の署名・実印の捺印をし、これを提出すれば、銀行側の相続手続き請求書には、預貯金を相続する代表相続人の署名・捺印のみで相続手続きを行えるという取り扱いがなされています。
ゆうちょ銀行でもこうした取り扱いにしてほしいところですが、今のところは、銀行側の相続手続き請求書に、相続人全員の署名・実印の捺印を必要とする取り扱いを変える予定はなさそうです。
したがって、被相続人の遺産の中にゆうちょ銀行の貯金が含まれていた場合は、
遺産分割協議書を作成する際の署名・捺印と同時に、ゆうちょ銀行の相続手続き請求書に署名・捺印をする
という手順で、相続手続きを進めることをおすすめします。
★最近では、遺産分割協議書にゆうちょ銀行の貯金を取得する人の記載があれば、当該貯金を取得する人の署名・捺印のみで手続きができるように改善されたようです。(2019.5.24追記)
4.すべての書類を提出、口座へ入金
以上のように手続きを進め、すべての書類をゆうちょ銀行へ提出後1〜2週間後に、払戻金が入金されます。
これで、ゆうちょ銀行の相続手続きは完了です。
5.貯金総額が100万円以下なら簡易解約が可能
ゆうちょ銀行では、被相続人の貯金の総額が100万円以下であれば、簡易解約が可能です。
簡易解約は、
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集める必要がない
→被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本だけでよい - 相続人全員の署名・実印の捺印をする必要がない
→代表相続人のみの署名・実印の捺印のみでよい
という点で、かなり簡単に手続きを済ませることができますので、該当する方は、こちらの方法で手続を済ませてしまったほうがよいでしょう。
次のような書類等をゆうちょ銀行の窓口へ持って行けば、手続きを完了させることができます。
- 相続手続請求書(ゆうちょ銀行窓口から受け取る)
- 被相続人の、死亡の記載のある戸籍謄本
- 被相続人と代表相続人の、関係性の分かる戸籍謄本
- 被相続人の、ゆうちょ銀行口座の通帳、証書
- 代表相続人の、印鑑証明書
- 代表相続人の、実印
- 代表相続人の、本人確認書類(運転免許証等)
★実際に手続きに行かれる前に、ゆうちょ銀行に必要書類を確認しておきましょう。
6.まとめ
以上が、ゆうちょ銀行の相続手続きの進め方となります。
ポイントは、相続手続き請求書に、相続人全員の署名・実印の捺印を要するところでしょう。できれば、遺産分割協議書の作成と同時に行うことをおすすめします。
ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。