相続手続きに関わる専門家は、税理士、弁護士、司法書士といわれています。また仲介役として、銀行等の機関が相続手続きに関わることも増えてきました。
各専門家にはそれぞれ得意分野というものがあります。あなたの要望に沿った相続手続きが実現できるように、ここで各専門家の特徴をご説明していきます。
1.弁護士
弁護士の専門は訴訟。争いのある相続手続きや、現に相続人同士でトラブルが発生してしまっている場合は、弁護士に相談されるとよいでしょう。
また、当事者一人の代理人となって、その人に有利に働くように各相続人との交渉をすることができるのも、専門家の中では弁護士のみ。自分に有利に、1円でも多く遺産をもらいたい…とお考えの方は、弁護士に相談されることをおすすめします。
一方で、争いのない円満な遺産相続をお考えの方は、始めから弁護士を立てることはおすすめしません。
たとえば、相手の立場に立って考えてみてください。いきなり弁護士からの手紙や電話がきたら、相手はどう思うでしょうか?不安に思い、身構えてしまう人が多いのではないでしょうか?また、突然喧嘩を吹っ掛けられたと怒り出す人もいます。
このように、弁護士を立てたことが争いの火種になってしまうことも少なくありません。
また、いざ弁護士を立てて裁判をしてみても、そのほとんどは法定相続分を目安に遺産を分けることになります。つまり、弁護士に交渉してもらったからといっても、自分だけに有利な遺産分割協議が成立するとは限らないのです。最終的には、「法律的に公平な」遺産分割協議が成立することになります。
- 現に相続争いが発生している人
- 遺産分割協議に不満がある人
2.税理士
税理士は、その名のとおり税金の専門家。相続税が発生する場合は税理士に相談されるとよいでしょう。税理士に依頼をすれば、相続税の申告を代理してもらえます。
もっとも、相続税は必ず発生する税金ではありません。相続税は、3000万円+相続人の人数×600万円の基礎控除があるからです。
たとえば、被相続人が2人の子を残して死亡した場合は、相続税の基礎控除額は4200万円となります。
つまり、このケースの場合、4200万円以上の遺産がなければ相続税は全く問題にならないのです。問題にならないとは、申告する必要もないし税金を収める必要もないということです。
平成28年度、全体の92%の人は、相続税を納める必要がなかったとの統計が出ています。
(国税庁:平成28年分の相続税の申告状況について)
- 相続税がかかる人
(相続財産が、基礎控除3000万円+相続人の人数×600万円を超える人)
3.司法書士
司法書士の専門分野は不動産登記(不動産名義変更)です。相続手続きでは多くの人(全体の約50%といわれています)が不動産の名義変更を必要としています。そして、不動産の名義変更のために集収・作成した書類は、ほとんどの相続手続きで再利用することができます。
したがって、いわゆる「普通」の相続手続きの相談・依頼をしたい場合は、司法書士に相談されることをおすすめします。
当事務所でよくあるケースをご紹介します。
まず、各種書類を収集・作成して不動産の名義を変更。不動産の名義変更と同時に「法定相続証明書」も取得します。
次に、不動産の名義変更で使用した書類と「法定相続証明書」を持って預貯金の解約、保険金の請求手続き、自動車の名義変更…と、司法書士の不動産登記という専門分野を起点として、様々な相続手続きを行うことができます。
なお、司法書士は、遺産承継業務(当事務所の遺産相続おまかせパックはこれのことです)をすることが法律上認められていますので、不動産をお持ちでない方でも問題なくご依頼していただけます。
その後に相続税がかかるようなら、紹介料は取らずに信頼できる税理士をご紹介しています。
このように、相続税がかからず(現にかかるかどうか分からない方も含めて)、できるだけ裁判をしたくないと考える方にとっては、司法書士を相続手続きの窓口とすることで、余計な機関や手続きが入らずに費用がグンと抑えられ、手続きもスムーズに進みます。
- 不動産の相続がある人
- 相続税がかからない人・相続税がかかるかどうか分からない人
- 専門家の費用を抑えたい人
4.相続専門家チームなど
専門家の中に「チームを組んで相続の対応をします」といった方々を見かけます。たしかに安心感はあるかもしれませんが、専門家が何人も関わったら費用はどうなるのでしょうか。
またそのチームの専門家は、お客様の相続にとって本当に必要な専門家でしょうか。
前述したように、司法書士だけでもかなりの範囲をカバーすることができます。実際に当事務所にご依頼いただいたほとんどの方が、当事務所のみで全ての手続きを終えて、費用を大きく抑えることに成功しています。
当事務所ではお客様の費用面の負担を考えて、司法書士の職務範囲に含まれない手続きに限って、他の専門家をご紹介するようにしています。
- たくさんの資産があり、多くの専門家に関与してもらいたい人
5.相続仲介機関など
専門家以外の機関の介入は、余計な費用(仲介手数料)がかかるだけなので避けたほうがよいでしょう。結局は仲介機関から専門家の紹介が必要になり、仲介手数料とは別に専門家報酬を支払うことになるからです。費用面、手続き面を考えてもメリットはありません。
6.各専門家の得意分野まとめ
★相続専門家の選び方
- このような方は弁護士へ
- 現に相続争いが発生している人
- 遺産分割協議に不満がある人
- このような方は税理士へ
- 相続税がかかる人
(相続財産が、基礎控除3000万円+相続人の人数×600万円を超える人)
- 相続税がかかる人
- このような方は司法書士へ
- 不動産の相続がある人
- 相続税がかからない人・相続税がかかるかどうか分からない人
- 専門家の費用を抑えたい人
- このような方は専門家チームへ
- たくさんの資産があり、多くの専門家に関与してもらいたい人
ここでは、各専門家の得意分野について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
ご自身の事情に合った専門家を選べば、手続きはスムーズに進みます。よければ参考にしてください。