遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。
「調停」と聞くとなんだか怖い印象があるかもしれませんが、簡単にいえば、裁判所を間に入れて遺産分割の話し合いをする手続きです。
協議がまとまらない際の解決方法の一つとして、非常に有効な方法となりますので、ここでご説明していきます。
1.遺産分割協議が成立しない場合は
相続手続きは、概ね次のような流れで進んでいきます。
- 相続人を確定する
- 遺産を確定する
- 遺産分割協議をする
- 各遺産の名義変更をする
このうち、もっとも重要なのは、③の遺産分割協議です。
遺産分割協議は、相続する遺産の種類によっては平等な分割をすることが難しく、つい感情的になってしまったり、法律的な論点も数多く含むためです。
- 相続人が複数人いる中で、連絡の取れない人がいる…
- 何度話し合いを重ねても、全員の意見が一致しない…
- 感情的な話し合いになってしまって、そもそも協議が成立しない…
といった理由で、協議が一向に進まないことも珍しくありません。
このような時の解決策の一つとして、家庭裁判所へ「遺産分割調停」を申し立てる方法があります。
2.遺産分割調停とは
「遺産分割調停」では、話し合いの場を家庭裁判所に移して、調停委員を交えながら協議を重ねていきます。通常の裁判とは異なり、原告や被告といった概念はなく、調停はあくまでも「話し合いの場」となります。
遺産分割調停は、相続人の一人から、その他の相続人を相手方として申し立てることができます。申立て後、家庭裁判所へ出頭する「期日」が決定し、各相続人へ通知がなされます。
調停の期日では、家事審判官1名と調停委員2名が相続人の間に入り、各々の主張・意向などを聞いていきます。約1~2か月に1度のペースで期日が設けられ、全員の意見が一致するまで、回数を重ねていきます。
3.遺産分割審判
何度も調停の期日を重ねても意見がまとまらない場合は、「遺産分割審判」へ手続きが進んでいきます。
遺産分割審判では、家事審判官が資料や証拠を調べ、当事者の意見等も考慮し、最終的な遺産分割の方法を決定します。
この決定に不服がある人は、2週間以内に高等裁判所へ不服を申し立てることができます。
期間内に誰からも不服申し立てがなされなかった場合は、遺産分割の審判が確定することになります。
そのため、まずは調停から申し立てをするのが、一般的な手順となります。
4.遺産分割調停の申立て方法
遺産分割調停の申立て方法は、下記のとおりです。
- 申立人
- 共同相続人
- 包括受遺者
- 相続分譲受人
- 申立先の裁判所
- 相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所
- 申立てに必要な費用
- 被相続人1人につき収入印紙1200円分
- 連絡用の郵便切手(各裁判所によって異なります。申立先の裁判所へお問い合わせてください)
- 申立てに必要な書類(相続人が、亡くなった人の子にあたる場合)
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の住民票又は戸籍附票
- 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券写し等)
※相続人が、亡くなった人の尊属(親)または兄弟姉妹にあたる場合は、こちらのページをご覧ください。(リンク先は裁判所HPです)
5.遺産分割調停成立後は
遺産分割調停(または審判)が成立した後は、作成された調停調書(または審判書)にもとづき、不動産や預貯金など各遺産の名義変更が可能となります。
6.まとめ
- 遺産分割協議がまとまらない時の解決策の一つとして、家庭裁判所へ「遺産分割調停」申し立てる方法がある
- 「調停」は、「裁判」とは異なり、あくまでも話し合いの場となる
- 遺産分割調停では、家事審判官1名と調停委員2名が相続人の間に入り、話し合いの期日を重ねていく
- 遺産分割調停が成立しない場合は、遺産分割審判へ手続きが進む
- 遺産分割調停(または審判)が成立した後は、その調停調書(または審判書)にもとづき、各遺産の名義変更が可能になる。
ここでは、遺産分割調停について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
協議がまとまらない場合の解決策の一つとして、このような方法があることを覚えておくと役に立つこともあるでしょう。
ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。