「どんな時に成年後見制度を利用すればいいの?」…このようなご質問をよく受けます。
成年後見制度の利用シーンは人によって様々ですので、一概に「こんな時です」ということはできませんが、裁判所の統計によると、成年後見制度利用の動機には次のようなものがあります。
それぞれ、どのような状況なのかみていきましょう。
1.預貯金の管理・解約
裁判所の統計によると、成年後見制度利用の動機の第1位が、預貯金の管理・解約となっています。
銀行の窓口から預貯金を下ろす際には、口座名義人本人の意思確認を求められます。銀行の立場からすれば、本人が認知症に罹患していれば、その意思がしっかり確認できないとして、たとえ身内の方が窓口に来ていたとしても預貯金を下ろして渡すことはできないということでしょう。
このような場合は成年後見人を選任すれば、本人に代わって預貯金の管理ができるようになります。
2.身上監護・介護保険の契約
成年後見制度利用の動機の第2位と第3位は、本人の身上監護と介護保険の契約というものです。
身上監護とは、本人の生活・医療・介護などに関する契約や手続きを行うことです。本人にとって必要な、介護保険の契約や、病院の治療費の支払いなどが含まれます。
たとえば、認知症になってしまったが近隣に頼れる親族がいない方は、成年後見制度を利用することで身上監護に関する適切な契約を結ぶことができます。
3.不動産を処分するため
統計の第4位が、不動産を処分するためです。
不動産の売買などの契約を有効に締結するためには、契約当事者の意思能力が必要です。認知症などで自分の意思をしっかり表示することが困難になってしまった人は、成年後見人が代わって契約をすることで、売買契約を有効に締結できます。
もっとも、どのような状況においても本人の不動産が売却できるわけではありません。成年後見制度は本人の財産を守るための制度ですので、その不動産を売却するためには本人とっての正当な理由が必要になります。この正当な理由とは、たとえば、「本人が施設に入居するため費用を捻出するが必要がある」などです。
成年後見制度と不動産の処分については、こちら↓の記事で詳しくご説明しています。
4.相続手続きで必要だったから
統計の第5位が、相続手続きで必要となったからです。
相続手続きの中で必要となる「遺産分割協議」を成立させるためには、物事の良し悪しを判断できる能力が必要とされています。これは、認知症などで判断能力の低下した人が、自分にとって不利益な遺産分割協議を認めてしまわないようにするためにです。
このような場合は、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加することになります。
5.まとめ
以上が、裁判所の統計でみた成年後見制度利用の動機です。もし、あなたが、このような事情にあたる場合は、一度専門機関に相談されてみてはいかがでしょうか。
成年後見制度の相談先は、当事務所のような司法書士事務所、社会福祉協議会、地域包括支援センターなど、様々なものがあります。どこを選んでもきちんと相談することができますので、ご自身の行きやすいところを選んで行けば大丈夫です。
裁判所-成年後見関係事件の概況から引用