自筆証書遺言とは、全文を自書する遺言のことです。誰にでも簡単に作成することができますが、法律上厳格な方式が定められている点に注意しましょう。
ここでは、自筆証書遺言の書き方と7つの注意点をご説明しています。
目次
自筆証書遺言を書くために守らなければいけないこと
自筆証書遺言の作成には、法律上決められた方式があります。
民法968条(自筆証書遺言)
1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2.自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
自筆証書遺言は、この法律に定められたとおりに作成しなければなりません。その注意点は、次のようになります。
1.全文を自分の手書きで書く
一部でもパソコンなどで作成したものは無効となります。必ず全文を自分の手で書きましょう。
筆記用具に特に決まりはありませんが、ボールペン・万年筆など消せないものを使用しましょう。用紙は長期間の保存に耐えられる丈夫なものを選んでください
2.日付を記入する
書いた日が特定できるように、年月日までしっかり記入しましょう。平成◯年◯月吉日といったものは無効です。日付まで忘れずに記入してください。
3.遺言には署名・捺印をする
捺印は認印でも可能ですが、実印が望ましいでしょう。署名・捺印がないものは無効となります。
4.遺言の内容の訂正方法
- 訂正した文字を2重線で消す
- 消した箇所に捺印
- 正しい文字を記載
- 欄外に訂正した箇所を指定し、訂正した旨を付記
- 付記した箇所に署名をする
この方式にしたがって、遺言の内容を訂正します。この方式が守られていない場合は、遺言の訂正は無かったものとして扱われます。
複雑な方式ですので、間違えたときは新たに書き直したほうが無難です。
5.遺言が数枚にわたる場合は契印をする
ページとページの間にまたがるように捺印をします。印鑑は、遺言に捺印した印を使用しましょう。
6.財産の特定ができるように記入する
不動産は登記簿のとおりに記載し、預貯金は支店名、口座番号まで記載します。財産の記載が不明確な遺言は、後日の争いの種になりかねません。
7.遺言は一人一枚
2名以上で遺言をした場合は無効になります。夫婦であっても、一人一枚の遺言を書きましょう。
以上が、自筆証書遺言を書く際の注意点となります。
遺言文例
遺言文例を掲載しておきます。ご参考までに。
遺言書 1 遺言者は、遺言者の所有する下記不動産を、妻A(昭和◯◯年◯月◯日生)に相続させる。 (1)土地 所在: 静岡県◯◯市◯◯区◯丁目 地番: 12番34 地目: 宅地 地籍: 100平方メートル (2)自宅 所在: 静岡県◯◯市◯◯区◯丁目12番地34 家屋番号:12番34号 種類: 居宅 構造: 木造瓦葺2階建 床面積: 1階100平方メートル 2階80平方メートル
2 遺言者は、下記銀行に対する遺言者名義の預金債権を、長女B(昭和◯◯年◯月◯日生)に相続させる。 (1)◯◯銀行 ◯◯支店 口座番号12345 (2)◯◯銀行 ◯◯支店 口座番号98765
3 遺言者は、その他遺言者に属する一切の財産を、長男C(昭和◯◯年◯月◯日生)に相続させる。
平成◯◯年◯月◯日 住所 静岡県◯◯市◯◯区12番地34 遺言者 D |
公正証書遺言も検討しましょう
自筆証書遺言は誰にでもすぐに書ける点で優れた遺言といえますが、前述した方式を守らないと遺言として認められず、無効となってしまうおそれがあります。
また、自筆証書遺言はその効力をめぐって争いになる事例も珍しくありません。証人がいなくても書ける点は自筆証書遺言の利点なのですが、裏をかえせば、その遺言は本当に亡くなった人が書いたのかという証拠がないのです。せっかく遺言を書いたのに、それをめぐって争ってしまうようでは本末転倒となってしまいます。
当事務所では、遺言の作成を検討されている方には、確実性のある公正証書遺言をおすすめしています。
公正証書遺言については、こちら↓をご覧ください。
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