相続人が被相続人(亡くなった人)の「相続財産を処分」した場合には、「法定単純承認」とよばれる事由に該当してしまいます。
この「相続財産の処分」とは、
- 相続財産の売却
- 預貯金の引き出し
- アパートの賃貸借契約の解除
などの行為を指します。
そして、法定単純承認に該当した相続人は、もう相続放棄をすることができません。
では、被相続人の葬儀費用を支払うために、相続財産である預貯金を引き出してしまった場合も、「法定単純承認」に該当してしまい相続放棄をすることができなくなってしまうのでしょうか。
ここでは、相続放棄と葬儀費用の支払いについて、ご説明していきます。
1.法定単純承認とは
法定単純承認にあたる行動は、次の法律に規定されています。
民法921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条 に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
(2号3号省略)
葬儀費用の支払いは、「相続財産の全部又は一部を処分したとき」に、該当する可能性があります。
2.身分相応の葬儀費用の支払いは、法定単純承認とはならない
前述したとおり、葬儀費用の支払いは、相続の単純承認に該当する可能性があります。
しかし、最近の裁判例には、「身分相応の、当然営まれるべき程度の葬儀費用であれば、単純承認には当たらない」と判断したものがあります。(大阪高裁平成14年7月3日決定参照)
これの理由として、
- 葬儀は社会的儀式としての必要性が高いこと
- 葬儀の時期を予測することが困難なこと
- 葬儀の執り行いには、相応の費用がかかること
などが挙げられています。
つまり、被相続人の預貯金から身分相応の葬儀費用の支払いをしても、「相続放棄は認められる可能性が高い」ということになります。
支出が認められるのは、「身分相応」といえる必要最小限の部分に限られています。
また、葬儀費用ではなく、墓石や仏壇の購入では結論が異なる可能性もありますで注意が必要です。
3.まとめ
以上、相続放棄と葬儀費用の関係を見てきましたが、いかがだったでしょうか。
裁判所から説明を求められた際にきちんと証拠として示せるように、葬儀費用に支出した領収書や明細書はきちんと残しておくようにしましょう。
ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。
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