相続放棄をした人は、その相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされます。様々な事情があって相続放棄をされた人がほとんどだと思いますので、もうその相続のことには触れたくない…と考える人も多いのではないのでしょうか。
しかし、法律は、「相続放棄をした人は次の相続人が相続財産の管理をすることができるようになるまで、相続財産の管理を続けなければならない」と規定しています。この管理をせずに近隣の住民に損害を与えてしまってたら、損害賠償を請求されてしまうおそれもあるでしょう。
そこで、ここでは、相続放棄をした後に注意すべき点を4つに分けて解説していきます。相続放棄後にやるべき事とやってはいけない事をわかりやすく説明していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.同順位の相続人全員が相続放棄をした後は、相続権は次順位の相続人に移る
相続人となる人の順番は
- 子(直系卑属(下の世代))
- 親(直系尊属(上の世代))
- 兄弟姉妹
※配偶者は常に相続人となっています。
そして、同順位の相続人が全員相続放棄をすると、相続権が次順位の相続人に移ります。
たとえば、子の立場にあたる人が全員相続放棄をした場合、①父母が健在であれば相続権は父母へ、②父母がすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹へ相続権が移ることになります。
被相続人(亡くなった人)に借金があるなどの理由があって相続放棄をするわけですから、相続権が移った次順位以下の相続人も、必然的に相続放棄を検討することになるでしょう。
したがって、次順位以降の相続人と連絡をとれるようなら、相続放棄の方法や注意点を教えてあげると次の相続放棄がスムーズに進みます。
なお、次順位以降の人の相続放棄の申述期間は、自分が相続人となったことを知った日から3ヶ月となっています。
2.相続放棄後の財産管理
法律は、「相続放棄をした人は次の相続人が相続財産の管理をすることができるようになるまで、相続財産の管理を続けなければならない」と規定しています。
民法940条(相続を放棄した者による管理)
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
(2項略)
このように規定されている理由は、たとえば建物が相続財産にあったとすると、誰かが管理しなければ郵便物が溜まり続けてしまうし、建物が荒廃して近所の人に迷惑をかけてしまうおそれがあるためです。
したがって、相続放棄後も少しの間は相続財産の管理を続ける必要があります。
あくまでも管理ですので、近隣の迷惑にならない程度に掃除をするぐらいで十分です。また、郵便物は処分せずにとっておくようにしましょう。
3.相続放棄は取り消されてしまうこともある
法律は、相続人が相続放棄をした後であっても、相続財産を勝手に使いこんでしまうなどの一定の行動を取った場合には、一旦受理した相続放棄を取消す旨を定めています。
民法第921条(法定単純承認)
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 二(略)
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
このように規定されている理由は、借金だけの相続放棄を防ぐことにあります。つまり、「借金の支払いはせずに、残ったお金だけを頂いてしまうような相続人は許しませんよ」ということです。
したがって、自分に悪意はなかったとしても、誤解されるような行動はとらないように気をつけましょう。相続放棄後に相続財産に触れるのは、あくまでも上記に書いた「管理」の範囲に止めておくべきということですね。
4.すべての人が相続放棄をした後は
すべての人が相続放棄をした後は、どうすればよいのでしょうか。前述した相続財産の管理はいつまで続いてしまうのでしょうか。
すべての相続人が相続放棄をした後は、相続人がだれもいなくなった場合に該当します。そして、家庭裁判所は、残された相続財産をすべて精算するために相続財産管理人を選任することができます。
相続財産管理人について、詳しくはこちら↓で解説していますのでご確認ください。
この相続財産管理人は、利害関係人(被相続人にお金を貸していた人や、最後に相続放棄をした人)が家庭裁判所に申し立てることで選任されます。
そして、相続財産の管理義務は相続財産管理人に引き継がれます。この引き継ぎをして相続人の管理義務は終了になります。
5.相続放棄後の注意点まとめ
相続放棄後の注意点について次の4点にまとめておきます。
- 相続人が相続放棄をすると相続権が次順位の相続人に移る。次順位以降の人の相続放棄の申述期間は、自分が相続人となったことを知った日から3ヶ月
- 相続放棄をした人は次の相続人が相続財産の管理をすることができるようになるまで、相続財産の管理を続けなければならない
- 相続放棄をした後であっても、相続財産を勝手に使いこみ、または売却などした場合には、一旦受理された相続放棄が取消されてしまうことがある。相続放棄後に相続財産に触れるのは、「管理」の範囲に止めておくようする
- すべての人が相続放棄をした後は、相続財産管理人が選任される。相続財産管理人へ相続財産を引き継いで、相続人の管理義務は終了する
相続放棄を終えた後にも、相続財産の管理は少しだけ続きます。ここに書かれている注意点は、しっかり確認しておいてください。
ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。
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