相続をするとマイナスの財産も引き継いでしまいますから、被相続人(亡くなった人)が多額の借金をしていればそれも引き継ぐことになります。
そして、相続した借金は相続人自身の借金となり、引き続き支払っていかなければなりません。
このような事態を防ぐために、相続人は相続放棄をすることで、借金の支払い義務を免れることができます。
しかし、
- 被相続人の残した借金がいくらなのか…
- 被相続人と長年連絡を取っていないため、そもそも借金を残しているのかすらも分からない…
という事情をお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、被相続人の借金の調査方法について、ご説明していきます。
1.前提として、相続放棄の申述期間内(3ヶ月)に調査を終えましょう
相続放棄の申述期間は、「被相続人の死亡を知ったときから3ヶ月以内」です。原則として、この期間内に調査を終えるようにしましょう。
もし、調査に時間がかかってしまうようなら、家庭裁判所に申立てをすることで、相続放棄の申述期間を延長することもできます。
「自分にとっての相続放棄の申述期限は、いつまでなのか」をきちんと確認してから、調査をはじめることをおすすめします。
詳しい期間計算の方法は、こちら↓の記事をご確認ください。
2.信用情報の開示請求をする
借金の主な借入先となる金融機関は、信用情報機関を作って個人の借金の情報を共有しています。
この信用情報機関には、次の3つの機関があります。
相続人からの申し出であれば、これらの機関から信用情報の開示請求ができます。郵送で請求した場合は、概ね1〜2週間程度で開示がなされるはずです。
開示請求に必要な書類は、以下のとおりです。詳しくは、各機関に問い合わせください。
- 信用情報開示申込書
→各機関のHPからダウンロード - 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
→市区町村役場で入手 - 被相続人と相続人の関係性が分かる戸籍謄本
→市区町村役場で入手 - 本人確認書類
→運転免許証のコピー等 - 定額小為替1,000円分
→郵便局等で入手
開示請求をして、「登録情報なし」の記載があれば、これらの系列機関からの借金はないということになります。
3.郵便物を確認
被相続人に借金があれば、請求書や督促状が送られてきます。送られてきた郵便物は、必ずすべて開封するようにしましょう。
特に、
- カード会社からの請求書
- 金融機関からの請求書
- 社会保険料の督促状
などは、きちんと確認するようにしましょう。
4.通帳の取引履歴を確認する
通帳の記載から、生活費や固定費以外で引き落としや振込等の項目があれば、借金を残している可能性があります。
たとえば、消費者金融からの借り入れは、定期的な振込によって返済されている方が多いです。振込先を確認すれば、どこの機関からの借り入れなのかが分かるでしょう。
5.不動産登記事項証明書を確認する
無担保で借りられる金額には、限度があります。高額な借金をする場合には、金融機関から不動産等を担保に入れることを求められます。
不動産に担保がついているのかは、「不動産登記事項証明書」によって確認できます(「不動産登記簿謄本」とも呼ばれます)。この書類は、お近くの法務局で入手することができます。
(出典:法務省-登記事項証明書の見本)
これの見方は、次のとおりです。
- 不動産の詳細が記載されています
- 現在の所有者が記載されています
- 金融機関の抵当権等(担保の権利)が記載されています
借金の調査の際に、注意して見るべきは③です。
不動産を担保に入れている場合は、ここに金融機関の「抵当権」という権利が記載されます。
上の例では、
- 債権額:4,000万円
→借入金額のこと - 利 息:年2.60%(年365日の日割計算)
- 損害金:年14.5%(年365日の日割計算)
- 債務者:法務五郎
→お金を借りた人 - 抵当権者:株式会社南北銀行
→お金を貸した人
の抵当権が付いていることが分かります。
この例のように、「誰が」「誰に」「いくら」貸したかは、登記簿によって確認することができます。
6.まとめ
被相続人の借金の調査方法
- 信用情報の開示請求
- 郵便物を確認
- 通帳の取引履歴を確認
- 不動産登記事項証明書を確認
ここでは、被相続人の借金の調査方法を見てきましたが、いかがだったでしょうか。
借金の調査の前には、相続放棄の申述期間を必ず確認しておきましょう。調査に時間がかかってしまうようなら、相続放棄の申述期間を延長することもできます。
ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。
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