遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった方)の遺産を相続人全員でどのように分けるのか協議をすること。遺産相続の最重要となるポイントです。
ここでは、未成年者と遺産分割協議をする方法についてご説明していきます。
1.未成年者と遺産分割協議
未成年者は、単独で有効な法律行為をすることができません。
民法第5条(未成年者の法律行為)
1.未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2.前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3.(略)
ここには、「未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意を得なければならない」と書かれていますね。法定代理人とは親権者のことをいい、法律行為には遺産分割協議を含みます。
つまり、未成年者が遺産分割協議をするには、親権者が代理して(または同意を得て)遺産分割協議をしなければならない、ということになります。
ただし、後述するように親権者は常に未成年者の代理ができるわけではありません。
2.親権者が未成年者を代理できないケース
たとえば、共同相続人の中に親権者と未成年の子がいる場合には、たとえ親権者であっても、子である未成年者の代理をすることはできません。未成年者の利益を害するおそれがあるためです。
次の図のように、未成年者Dと親権者Bが同時に相続人となってしまう状況を、未成年者と親権者の利益相反のあるケースといいます。
3.特別代理人の選任
上記例のように、遺産分割協議で親権者が子を代理することができない場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求することになります。
そして、選任された特別代理人は、未成年者を代理して遺産分割協議に参加します。なお、未成年者が2人以上いる場合は、それぞれ別々の特別代理人を選任しなければなりません。
特別代理人になるための資格は特になく、誰でもなることができます。実際には、未成年者の祖父母や近い親戚を選任することが多いようです。
特別代理人の選任をせずにされた遺産分割協議は、無効となってしまう可能性があるので気を付けましょう。
なお、特別代理人の選任には、だいたい1~2カ月程度の期間がかかります。
4.特別代理人選任に必要な書類
- 申立人
- 親権者
- 利害関係人
- 費用
- 収入印紙800円分(子1人につき)
- 連絡用郵便切手(申立てされる裁判所により異なります。申立て先の裁判所のHPをご確認ください)
- 申立先
- 子の住所地の家庭裁判所
- 必要書類
- 申立書(各家庭裁判所HPからダウンロードできます)
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案)
- (利害関係人からの申立ての場合)利害関係を証する資料(戸籍謄本等)
この他に家庭裁判所から追加の書類を求められる場合があります。
5.特別代理人と遺産分割の留意点
特別代理人の制度は、未成年者の利益を守るための制度。したがって、未成年者の不利益となるような遺産分割協議をすることはできません。特別代理人選任時に添付する遺産分割協議書(案)のとおりに遺産分割協議を成立させることになります。
6.未成年者と遺産分割協議をする方法まとめ
未成年者と遺産分割協議をする方法について、次の4点にまとめておきます。
- 未成年者が遺産分割協議をするには、親権者が代理してしなければならない。ただし、親権者は常に未成年者の代理ができるわけではない
- 遺産分割協議において、親権者と子の利益が相反する場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求することになる
- 選任された特別代理人は、未成年者の代理人として遺産分割協議に参加することができる
- 特別代理人の制度は未成年者の利益を守るための制度なので、未成年者の不利益となるような遺産分割協議をすることができない
ここでは、未成年者と遺産分割協議をする方法について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
未成年者との遺産分割協議は、専門的な手続きや知識が必要になります。ご自身で手続きを進めることが難しい場合は、お近くの司法書士をお尋ねください。
コメントを残す