自分が相続人でないのに、ある日突然債権者から通知が来ることがあります。
通知の内容は、「先順位の相続人全員が相続放棄をしたので、あなたが相続人になったこと。相続人として、被相続人(亡くなった人)の借金の支払い義務があること」などが書いてあることでしょう。
このような内容の通知は真実である可能性が高く、無視することは得策ではありません。しかし焦る必要もなく、あなたが適切な手続きをとればなんら不利益を受けることはありません。
ここでは、先順位者の相続放棄によって、あなたが相続人になった時にするべきことを3つに分けてご説明していきます。
1.まずは、先順位相続人の相続放棄を確認しましょう
相続人となる人の順番は次のとおりです。
- 子(直系卑属(下の世代))
- 親(直系尊属(上の世代))
- 兄弟姉妹
※配偶者は常に相続人です。
そして、同順位の相続人が全員相続放棄をすると、相続権が次順位の相続人に移ります。
たとえば、子の立場にあたる人が全員相続放棄をした場合、①父母が健在であれば相続権は父母へ、②父母がすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹へ相続権が移ることになります。
冒頭にも書きましたが、債権者から通知が来たら、自分は相続人でないと思って無視してはいけません。先順位の相続人全員が相続放棄をすれば、あなたに相続権が移ることは十分ありえることだからです。
そして、自分には関係ないと思って放っておくと、相続の単純承認に該当してしまうため、被相続人の借金の支払い義務を引き継ぐことになってしまいます。
このようなことを防ぐために、まずは、先順位の相続人の相続放棄の有無を確認していきます。
先順位の相続人と連絡をとれるようなら、単純に電話等で連絡をとって相続放棄の有無を確認すればよいでしょう。
連絡がとれない場合は、家庭裁判所へ「相続放棄の有無照会」をします。照会先の裁判所は被相続人の死亡時の住所地の家庭裁判所です。
裁判所の管轄はこちら(リンク先は裁判所HPです)
必要書類は次のとおりです(必要書類の詳細については、各裁判所にお問い合わせください)。
- 照会申請書(各裁判所備え付けのもの。裁判所によっては、HPからダウンロードもできます)
- 被相続人等目録(各裁判所備え付けのもの。裁判所によっては、HPからダウンロードもできます)
- 被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
- 照会者と被相続人の発行から3か月以内の戸籍謄本(照会者と被相続人との関係がわかる戸籍謄本)
- 照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
- 返信用封筒と返信用切手
なお、照会料は無料です。
この照会で先順位相続人の相続放棄の有無が確認できたら、次の手順に進みましょう。
2.あなたの相続放棄の申述期間を確認しましょう
次に、相続放棄の申述期間を確認します。相続放棄の申述期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から「3ヶ月」以内です。
民法915条(相続の承認または放棄をすべき期間)
1.相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(2項略)
もし、あなたが債権者からの通知で自分が相続人になったことを知ったのなら、その通知が来た日から3ヶ月間が相続放棄の申述期間ということになります。相続放棄の手続きを進める前に、この期間をきちんと確認しておきましょう。
なお、家庭裁判所に請求をすることで、この期間が伸長できることも覚えておきましょう。
3.相続放棄をしましょう
最後に相続放棄をすれば、被相続人の借金の引き継ぎを回避することができます。もし、債権者から問い合わせがきても、相続放棄をしていれば返済を迫られるようなことはありません。
相続放棄の方法は、先順位の相続人に聞きながら手続きを進めていけばよいでしょう。もし、先順位の相続人と連絡がとれないようなら、こちら↓の記事を参考に手続きを進めてみてください。
4.まとめ
- 先順位の相続人の相続放棄の有無は、家庭裁判所へ「相続放棄の有無照会」をすることで確認する。
- 相続放棄の申述期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から「3ヶ月」以内。この期間は、家庭裁判所に請求をすることで伸長することができる。
- 相続放棄をすれば、被相続人の借金の引き継ぎを回避することができる。
ある日突然、債権者からの通知が来たら驚くこともあるでしょう。しかし、ここに書かれているような適切な手続きをとれば、あなたが不利益を受けるようなことはありません。
ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。