相続手続き中に更なる相続が発生してしまうことを、「数次相続」といいます。数次相続が発生すると、相続人の人数が増え、手続きは困難さを増していきます。
数ある手続きの中でも、もっとも複雑になるのは遺産分割協議でしょう。なぜなら、遺産分割協議は、相続人全員の同意を必要とするからです。相続人の人数が増えてしまうと、協議の開催すら困難になっていきます。
ここでは、数次相続が起こってしまった場合の手続きの方法をご説明していきます。相続手続きを進めるための役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
1.数次相続の具体例
数次相続の具体例は次のようになります。
- 平成20年にAが亡くなる(第1相続)
- Aの相続人は、BとC
- 平成25年、Aの遺産分割協議が終了していないうちにBが亡くなる(第2相続)
- Bの相続人はDとE
このように、第1相続が発生して遺産分割も相続登記も完了していない間に、第2相続が発生してしまうことを数次相続といいます。相続手続き中に新たな相続が発生してしまった状態です。
2.Aの相続手続きはどうやって進めるのか
数次相続が起こってしまった場合にもっとも注意しなければならない点は、遺産分割協議の当事者を把握することです。
遺産分割協議者の当事者となる地位は、死亡によって相続人に引き継がれます。前述した具体例の場合、本来のAの遺産分割協議の当事者はBとCでした。このうちBは死亡してしまったため、Bの相続人であるCとDが遺産分割協議の当事者となる地位を引き継ぐこととなります。
つまり、Aの遺産分割協議の当事者はC、D、Eの3名となります。
注意しなければならない点は、Bの相続も発生している点です。Aの遺産分割協議はC、D、Eの3名で協議をしますが、Bの遺産分割協議は、相続人であるDとEのみで協議をすることになります。
それぞれの被相続人に対する相続人を把握して、適切に遺産分割協議を開催してください。
遺産分割協議がまとまりさえすれば、その後の手続きは通常の相続手続きと同じ進め方で大丈夫です。各種遺産を取得した人に、名義を変更していけばよいということですね。
遺産分割協議の基本的な知識については、こちら↓の記事を参考にしてください。
3.数次相続の問題点
相続登記を長年放置した状態でいると、数次相続が発生してしまう可能性が高くなります。
上記の例はまだ簡単なケース。実際には、祖父の時代からの相続登記を長年放置してしまい、数次相続が何件も発生してしまったような事例もあります。
数次相続が何件も発生してしまうと、何十通もの戸籍を取り寄せる必要があります。戸籍は本籍地の市区町村役場から取り寄せるため、何度も郵送でやり取りすることになり、かなりの時間がかかるでしょう。
さらに、数次相続では、遺産分割協議の当事者の人数も膨れ上がってしまいます。この中には相続人間で面識のない、遠縁の親族が含まれる可能性も高まります。
遺産分割協議はただでさえデリケートな手続きですので、ほとんど面識のない遠縁の親族間での話し合いをまとめることは非常に困難となるでしょう。結局話し合いがまとまらず、調停などの裁判上の手続きが必要になってくるかもしれません。
4.相続登記はお早めに
前述したように、相続登記を放置して数次相続が発生してしまうと、かなりの時間と費用を費やすことになってしまいます。したがって、相続登記は早めに済ませてしまったほうが、結局は時間と費用を節約することになるでしょう。
現に数次相続が発生してしまっている方は、お早めの対応をおすすめします。
5.数次相続と代襲相続の違い
数次相続と間違えやすいのが代襲相続と呼ばれる制度です。
代襲相続は、相続人となるべき人が被相続人より先に亡くなってしまった場合に起こります。たとえば、次の図を見てください。
- 被相続人をA(平成28年に死亡)とします。
- Aの子BはAよりも先(平成20年)に亡くなっています。
- C・DはAの孫という事例です。
本来Aの相続人は子のBになるはずです。しかし、BはAよりも先に亡くなっています。こうなると、CとDが代襲してAの相続人となります。
数次相続と代襲相続の見分け方は、A(被相続人)とB(相続人となるべき子)の亡くなる順番です。
「Aが亡くなる前に、Bが亡くなっている」という死亡の順序で発生するのが代襲相続。「Aが亡くなった後に、Bが亡くなった」という場合が、数次相続となります。
代襲相続について、詳しくはこちら↓で解説しています。
6.数次相続についてまとめ
数次相続についてのポイントを次の5点にまとめておきます。
- 数次相続とは、相続手続き中に新たな相続が発生してしまった状態のことをいう
- 数次相続が起こってしまった場合の遺産分割協議の当事者は、第2相続の相続人を含む
- 数次相続で遺産分割協議の当事者の人数が増えてしまった場合は、面識のない遠縁の親族も含まれる可能性も高くなり、話し合いをまとめるのが非常に困難となる
- 数次相続と間違えやすいのが代襲相続と呼ばれる制度
- 「Aが亡くなる前に、Bが亡くなっている」という死亡の順序で発生するのが代襲相続で、「Aが亡くなった後に、Bが亡くなった」という場合が数次相続となる
ここでは、数次相続についてみてきましたが、いかがだったでしょうか。
数次相続が発生してしまうと、手続きは困難さを増し、時間と費用を多く費やすことになってしまいます。こうならないために、相続が起こった後は、速やかに手続きを進めていくようにしましょう。
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