相続される財産とは、被相続人(亡くなった人)が死亡当時に有していたプラスの財産とマイナスの財産のほぼすべてです。このマイナスの財産の中には保証人の責任も含まれます。
もし、被相続人が誰かの保証人になっていたのであれば、その保証がどのような内容なのかを調査する必要があります。調査の結果、あまりにも責任の重い物だったら相続放棄を検討する必要もでてくるでしょう。
ここでは、保証人の責任の相続について解説していきます。相続に限らず、保証人の責任について気になっている方には役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.まずは相続される財産とはなにかを確認しましょう
相続される財産については、次の法律に規定されています。
民法896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
ここには、「相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と書かれていますね。この「被相続人の財産に属した一切の権利義務」の中には、マイナスの財産である保証人の責任も含まれます。
したがって、被相続人の保証人としての責任は相続される財産の対象ということになります。
2.保証人の種類
保証人には大きく分けて次の3種類があります。
- 普通の保証人
- 連帯保証人
- 身元保証
この3種類の保証人の内、金融機関等で一般的に使用されているのは「連帯保証人」です。したがって、単に「保証人」といった場合でも、多くの場合はこの「連帯保証人」を指すことを覚えておきましょう。
この3種類の保証人は「保証人としての責任の範囲」が異なります。それぞれどのような責任を負っているのか、見ていくことにしましょう。
3.保証人の責任とは
「普通の保証人」と「連帯保証人」の責任については、次の法律に規定されています。
民法446条(保証人の責任等)
1.保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2.保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3.(略)
ここには「保証人は主たる債務者(お金を借りた人)がお金を返せない場合などに、保証人が代わってそのお金を返す責任を負う」ということが書かれています。
この点について「普通の保証人」と「連帯保証人」に責任の違いはありません。
4.「普通の保証人」と「連帯保証人」の違い
「普通の保証人」には「連帯保証人」にはない次の2つの権利があります。
4−1.催告の抗弁権
民法452条(催告の抗弁)
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない
催告の抗弁権とは、債権者(お金を貸した人)に対して、まずは債務者(お金を借りた人)に十分な請求をするように求めることができる権利です。
4−2.検索の抗弁権
民法453条(検索の抗弁)
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない
検索の抗弁権とは、債権者が債務者に請求をした後であっても、債務者に財産があることを保証人が証明することができれば、まずはそちらから請求するように求めることができる権利です。
一方で、連帯保証人には上記2つの権利がありません。
民法454条(連帯保証の場合の特則)
保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条(検索の抗弁・催告の抗弁)の権利を有しない。
ここに書かれているとおり、連帯保証人は「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」を持ちません。
言い換えれば、「債務者の支払いが滞った場合、債権者は連帯保証人に対して、いつでも全額を請求することができる」ということです。連帯保証は、普通の保証に比べて、債権者にとってかなり有利な制度といえるでしょう。
前述しましたが、金融機関等で一般的に使用されているのはこの「連帯保証人」です。したがって、相続される保証人の責任とは、そのほとんどが連帯保証人の責任ということになります。
5.連帯保証人の責任の相続
連帯保証人の責任は、法定相続分に応じて分割して相続されることになります。
たとえば、被相続人(亡くなった人)が3000万円の連帯保証人になっていて、相続人が子供3人という状況で考えてみましょう。
この場合の法定相続分は各々3分の1ずつです。
3000万円をそれぞれの法定相続分である3分の1ずつで相続するので、各人の相続した保証人の責任は1人1000万円となります。
6.相続されない保証人の責任もある
原則として、保証人の責任は相続されるのですが「身元保証」や「信用保証」と呼ばれているものは相続されません。
身元保証とは、たとえば、ある人がだれかに損害を与えた場合などに、身元保証人がその損害を賠償するという制度です。
身元保証は、保証される者と保証する者との間の高い信頼関係に基づき交わされるものなので、相続の対象とはならないとされています。
7.状況によっては相続放棄を検討しましょう
あまりにも保証人としての責任が重すぎる場合には、相続放棄の検討もしておきましょう。
相続放棄はすべての相続財産を放棄する手続きですので、保証人としての責任も放棄することができます。
8.保証人と相続まとめ
保証人と相続の関係について、次の7点にまとめておきます。
- 被相続人の保証人としての責任は、相続される財産の対象となる
- 保証人の種類は大きく分けて、①普通の保証人、②連帯保証人、③身元保証の3種類
- 金融機関等で一般的に使用されているのは「連帯保証人」。したがって、相続される保証人の責任とは、そのほとんどが連帯保証人の責任ということになる
- 連帯保証人は「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」を持たない
- 連帯保証人の責任は、法定相続分に応じて分割して相続される
- あまりにも保証人としての責任が重すぎる場合には、相続放棄の検討をしたほうがよい
- 原則として、保証人の責任は相続されるが「身元保証」や「信用保証」と呼ばれているものは相続されない
ここでは保証人と相続の関係についてみてきましたが、いかがだったでしょうか。
相続をした後で困ったことにならないように、相続する財産の内容をしっかり確認しておくことが大切といえます。ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。
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