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成年後見制度利用時に、親族が負担するお金はいくらになる?

砂場で遊ぶ子供を見守る老人

「成年後見制度の利用の際に、親族が負担するお金はいくらになりますか?」というご質問をよくお受けします。

普段の生活をする中で、まず馴染みがないこの制度。利用する前に金銭的な負担を確認することは、親族として当然のことだと思います。

ここでは、成年後見制度利用時に親族が負担する金銭について、ご説明していきます。

1.成年後見制度の費用負担は、2段階に分けて考える

成年後見制度にかかる費用の負担は、

  1. 成年後見制度開始申立てにかかる費用
  2. 成年後見制度利用中に専門家へ支払う報酬

の2段階に分かれています。

そして、それぞれ、

  1. 本人の負担とできる部分
  2. 親族(申立人)が負担しなければいけない部分

に分かれていますので、次項以下で詳しく解説していきます。

★成年後見制度の費用負担(下図のように分かれる)

後見制度開始申立て 後見制度利用時
本人が負担する部分 本人が負担する部分
親族(申立人)が負担する部分 親族(申立人)が負担する部分

2.申立て時にかかる費用と親族の負担

申立てにかかる親族の負担

成年後見制度の開始申立てにかかる費用は、次のとおりです。

実費
  1. 戸籍等の証明書(300円〜500円)
  2. 印紙代(800円)
  3. 切手代(裁判所によって異なる。目安2,500円)
  4. 医師の診断書(必須。目安1万円)
  5. 精神鑑定費用(省略されることもある。目安5〜10万円)
専門家報酬
  1. 目安として10万円(専門家によって異なる)

これらの費用のうち、実費については、本人の負担とすることができます。成年後見制度開始申立ての書類に「申立て費用については、本人の負担とする」という項目が設けられていますので、ここにチェックを入れれば、親族が一時的に負担した費用も本人の財産の中から返還を受けることができます。

一方で、申立て時の専門家報酬については、親族(申立人)が負担することになります。この専門家報酬は、申立てを司法書士などの専門家に依頼した場合に発生します。

報酬の額は各専門家によって異なりますが、目安として10万円程度となるところが多いようです。(参考までに、当事務所の成年後見制度申立て報酬は、98,000円(税別)となっております)

なお、申立てをご自身でされる場合は、専門家報酬は発生しません。

★成年後見制度申立て時の費用負担内訳

本人負担部分 親族(申立人)負担部分
申立て実費

(約15,000円)

(状況によって、鑑定費用5〜10万円追加)

専門家報酬

(約10万円)

専門家報酬の本人負担について

「申立てにかかる専門家報酬を、本人の財産から支出できないか」というご相談をよくお受けします。前述しているとおり、専門家報酬は約10万円ほどかかりますので、親族の負担は相当なものです。できれば、本人の財産から…と思うのは当然のことでしょう。

結論からいえば、一定の条件下では、申立てにかかる専門家報酬を本人の財産から支出することができます。

その条件とは、

  1. 本人が、成年後見制度を利用したいという意思を表明していること
  2. 本人が、専門家に支払う報酬のことを理解していること
  3. 本人自身が申立てをすること

の3点です。

たとえば、本人が認知症等に罹患し意思疎通が困難であれば、これらの条件を満たすことは難しいでしょう。そもそも、本人に適切な意思表示が可能であれば、成年後見制度の利用は必要ないはずです。つまり、「本人が適切な意思表示によって、成年後見制度の利用を希望している」というのは、ある意味矛盾しています。

ところで、成年後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があります。それぞれの類型における、本人の判断能力の程度は次のようになります。

  1. 後見
    →常に判断能力を欠いている状態にある人
  2. 保佐
    →常に判断能力を欠いている状態ではないが、自分の重要な財産を管理・処分するためには、誰かの援助を必要とする人
  3. 補助
    →ある程度の判断能力は保っているが、一部の重要な財産を管理・処分するためには、誰かの援助を必要とする人

「後見」類型は、常に判断能力を欠いている人を対象としています。この類型にあたる人が、自分の意思で成年後見制度の利用を希望する、という意思を表明することは難しいでしょう。

一方で、「保佐」と「補助」の類型においては、常に判断能力を欠いている状態にある人が対象ではありません。成年後見制度のことをきちんと説明すれば、理解できる人もいるはずです。

つまり、本人が「保佐」や「補助」の類型にあたる場合には、前述した3つの条件を満たすことも可能です。そして、その条件を満たせば、申立て時の専門家報酬を本人の財産から支払うことができます。(注:「必ずできる」というものではありません。最終的には申立てをする専門家の判断によります)

成年後見制度の3つの種類については、こちらの記事↓をご覧ください。

海辺を歩く老夫婦

3.成年後見制度利用中にかかる費用と親族の負担

後見制度利用中の親族の負担

後見人に司法書士などの専門職が選任された場合は、本人の財産の中から報酬を支払うことになります。この報酬額は、本人の財産の多寡に応じて裁判所が決定をします。

★後見人報酬の目安

本人の財産が1000万円以下 月額2万円
本人の財産が1000万円〜5000万円 月額3〜4万円
本人の財産が5000万円以上 月額5〜6万円

その他、後見人が特別な行為をした場合に支払われる、付加報酬と呼ばれるものがあります。

★付加報酬の例

  1. 訴訟行為
  2. 遺産分割調停
  3. 居住用不動産の任意売却 など

なお、成年後見制度利用中に親族に請求される金銭は、原則としてありません。たとえ本人の財産が少なくて後見人への報酬が支払えなくても、親族へ請求がいくことはありません。

★成年後見制度利用中の費用負担内訳

本人負担部分 親族(申立人)負担部分
専門家報酬(本人の財産の多寡に応じて裁判所が決定) 原則としてなし

4.まとめ

★成年後見制度の費用負担まとめ

後見制度開始申立て 後見制度利用中
本人が負担する部分 申立て実費

(約15,000円)

(状況によって、鑑定費用5〜10万円追加)

専門家報酬

(本人の財産の多寡に応じて裁判所が決定)

親族が負担する部分 専門家報酬

(約10万円)

原則としてなし

ここでは、成年後見制度利用における費用負担を、主に親族の視点から見てきましたが、いかがだったでしょうか。

もし、あなたが、この制度の費用に関して疑問があるようでしたら、きちんと専門家に確認しておくことをおすすめします。「お金のことばかり聞くのは気が引ける…」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、気にする必要はありません。

その他、成年後見制度の費用については、こちら↓の記事も参考になります。

計算機とノート

ここでの記事が、あなたの参考になれば幸いです。

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ABOUT US
みな司法書士法人 川上直也
司法書士になる前は、特別養護老人ホームで介護の仕事をしていました。私は、実際にお年寄りが法律の問題でお悩みになっている姿を身近で見て、誰もが気軽に相談できる、心に寄り添う法律の専門家が必要だと感じるようになりました。こうした思いから司法書士になり、当事務所を立ち上げるに至ります。ご相談は、お気軽にどうぞ。