土地・家などの不動産を相続した場合は「相続登記」をする必要があります。相続登記とは、亡くなった方名義の不動産を相続人名義へ移すこと。不動産の名義変更手続きといったイメージでしょうか。
不動産は価値の高い重要な財産ですから、「相続登記」は数ある相続手続きの中でも重要な位置づけになります。
ここでは、そもそも「登記」とはどんな制度なのか、「相続登記」とはなにかを解説していきます。相続手続きを進める際の役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.登記とは不動産に名義を付ける手続きのこと
あなたは「登記」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?土地を買ったり、家を建てたのなら「登記」を経験されているはずです。しかし、一般の方が人生で「登記」を経験する時はそれぐらいなもの。「登記」という言葉は、かなり馴染みの薄い言葉といえますね。
おおざっぱにいうと、登記とは、不動産に自分の名義を付けること。不動産に名前を書くことはできませんから、「登記」という制度を使ってどの不動産が誰のものか分かるようにしているということです。
自分の名義以外に他人の権利関係を登記することもできます。たとえば、家を建てたときに金融機関でお金を借りて住宅ローンを組んだ人は、金融機関の「抵当権」という担保の権利を登記しているはずです。
登記をして登記名義を綴った帳簿(現在はデータ化されています)を「登記簿」といいます。この登記簿に名義や権利を記載すると、「この不動産は私のものです」、「この不動産には私の抵当権が付いています」などと自分の権利を世間に対して主張する効果があるのです。
登記簿は不動産所在地を管轄する法務局に管理されていて、誰でも見ることができます(正確には法務局で登記事項証明書の交付を受けることで見ることができます)。誰でも見られる登記簿に、誰でも分かるように権利関係を記載しておくことで、不動産取引の安全と円滑をはかる役割もはたしています。
2.相続と登記
あなたが今住まわれている土地・家などの不動産のほとんどには、誰かの名義で登記がされています。
この「登記の名義人」が亡くなると、その名義を相続人へ移す作業が必要になります。これが「相続登記」と呼ばれるもの。簡単にいえば相続による不動産の名義変更手続きです。
不動産は価値の高い重要な財産ですから「相続登記」は数ある相続手続きの中でも重要な位置づけになります。
3.相続登記は自分でも出来る
相続登記は自分ですることもできます。このホームページにも手続きの詳細を載せていますし、法務局で相談をすることもできます。登記を自分でする際に必ず気を付けなければならない注意点は次の2点です。
3−1.被相続人(亡くなった人)所有の不動産を漏れなく登記すること
相続登記に漏れがあると後々さらなる手間と費用がかかることになるでしょう。この漏れなく登記するということは、一見すると簡単そうですが一般の方にはなかなか難しいようです。
なぜ難しいのかというと、家が建っている土地は一筆の土地とは限らないからです。一見すると家が建っている土地は一つしかないようにみえます。しかし、実際には複数の土地が組み合わさって一つの土地(家を建てている土地)になっている場合が多いのです。
さらに、家の前に私道がある場合は、道路の持分まで所有している可能性もあります。家の前の道路はご近所さんと共有していることが多いので、その持分のみの移転の登記をする必要があります。
このように、被相続人は一つの土地と一つの家しか不動産を所有していないと思っていても、実際には複数の土地や道路持分まで所有している場合があるため、しっかり確認することが必要です。
また、畑など複数の土地を所有している場合は、不動産の把握がさらに難しくなってきます。当事務所に依頼に来られる方の中でも、被相続人の所有している不動産を正確に把握されている方は意外と少ないものです。
登記に漏れがありそれを長年放置してしまうと、後々さらなる手間と費用がかかることになってしまいますので、被相続人所有の不動産は漏れなく登記するように心がけておきましょう。
3−2.簡単に法定相続分の持分割合で登記をしないこと
法律上問題になることはありませんが、不動産を法定相続分の持分割合で登記をしてしまうことはおすすめしません。後々の処分に困ることがあるからです。
たとえば、不動産を共有持分で所有していると、不動産の売却や不動産全体に抵当権を設定する際に共有者全員の同意が必要になります。
また、その不動産に住んでいない共有者に不動産の管理費を請求するのか?といった問題も生じてきます。
さらに、不動産の共有者に相続が発生した場合は不動産の持分がさらに細分化していきます。共有者が増えれば増えるほど不動産の管理は難しくなっていくでしょう。
こうならないためには、相続登記の前に遺産分割協議を経て、不動産の所有者を慎重に決定する必要があるのです。
遺産分割協議とは、被相続人の遺産を相続人の全員でどのように分けるのか協議をすることです。詳しくは、こちら↓の記事をご覧ください。
相続登記に必要な書類と申請書の記載方法については、こちら↓の記事が参考になります。
4.登記と司法書士
登記は司法書士の専門分野となります。法律で登記を業として行えると定められているのは司法書士と弁護士のみであり、そのほとんどを司法書士が担っています。
自分でもできる相続登記ですが、将来のことを考えて確実に相続登記をするためには、司法書士に相談されることをおすすめします。
司法書士、税理士、弁護士などの各専門家には、それぞれ得意としている分野があります。詳しくは、こちら↓の記事を参考にしてください。
5.相続登記まとめ
登記という制度と相続登記についてのポイントを、次の7点にまとめておきます。
- 登記とは不動産に自分の名義や他人の権利関係を付ける手続きのこと
- 登記をして登記名義を綴った帳簿(現在はデータ化されている)を「登記簿」という
- 登記簿に名義や権利を記載することで、自分の権利を世間に対して主張する効果がある
- 相続登記とは亡くなった方名義の不動産を相続人名義へ移すこと
- 相続登記に漏れがありそれを長年放置してしまうと、後々さらなる手間と費用がかかるので、被相続人の所有している不動産は漏れなく登記したほうがよい
- 共有者が増えると不動産の管理が難しくなるので、相続登記の前に遺産分割協議を経て、不動産の所有者を慎重に決定したほうがよい
- 自分でもできる相続登記だが、将来のことを考えて確実に相続登記をするためには司法書士に相談するのもおすすめ
不動産は価値の高い重要な財産ですから、「相続登記」は数ある相続手続きの中でも重要な位置づけになります。
ご自身での申請を負担に感じるようでしたら、司法書士などの専門家に依頼することも考えてみてはいかがでしょうか。
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